サラリーマンに、毎年必ずやってくる年末調整
若い世代のサラリーマンにとっては、ボーナスの上乗せくらいのイメージで、いくらお金が還ってくるのかまで関心をもっている人は少ないと思います。
そのため、年末調整の担当者から「○○さん、年末調整に必要だから、生命保険料控除通知書、早く持ってきてくださいよ」なんて迫られても、正直ちょっとうっとうしいだけ。
でもこれ、ちゃんと提出して、正しく計算してもらわないと、払わなくていい税金を国に納めることになってしまいます。
今回は、年末調整の還付金について説明したいと思います。
サルでも分かる年末調整の計算方法
年末調整は、仕組みがイメージできれば、そんなに難しいものではありません。
1.年末調整とは
先に結論を言うと、年末調整とは「1年間で源泉徴収された所得税の金額と、確定した所得税の金額との差額を還付する制度」です。
これがイメージできる方は、下記の2,3の項目は読まなくてOKです。
でも、これだけじゃわかりにくい…担当以外の部署の方なら、その通りだと思います。
では、次の項目で、キーワード「源泉徴収」を簡単にみていきましょう。
2.源泉徴収とは
サラリーマンは、毎月の給与から所得税を会社に差し引かれ、勝手に国に納められています。
これがイメージできるなら、「源泉徴収」については既に理解できていますので、この項は読む必要はありません。
サラリーマンは、毎月の給料から「所得税」がひかれています。
もし、給与明細がお手元にあるのなら、ちょっと見てください。「源泉所得税」って書いてある欄があるはずです。
ここでひかれたお金は、翌月(あるいは半年に1度)、会社が国に支払います。
そうすることにより、国は、サラリーマンから確実に税金を回収することができます。
このように、会社が間に入って税金をいったん預かって国に納めることを、「源泉徴収」と呼びます。
余談ですが、「源泉」とは、温泉の湧き出るもとです。
これは、会社が給料を出すことから、会社をこの「源泉」に例え、湧き出るもとからから税金を「徴収」するため、「源泉徴収」という名称がつけられたのです。
初めて聞いた時は、何となくお金を吸い上げられるイメージで不快でした。
ところが、この制度があるため、サラリーマンは自分で所得税を計算する、つまり確定申告という大変な作業をしなくて済んでいるため、皆さんの事務負担を軽くする点では、よい制度だと言えます。
3.源泉徴収は、所得税の前払い
このタイトルのイメージがつくなら、この項は読む必要はありません。
所得税は、個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間に得た収入の合計金額に対してかかる税金のことです。
つまり、1年間の収入の合計金額がわからない年の途中では、その年の所得税がいくらになるか、まだわかりません。
あれ?それなら、毎月の給与から源泉徴収されている所得税って何?
それは、国が出した「予想」の金額です。
毎年、国税庁が出す「源泉徴収税額表」で、「今月の給与が〇〇円から〇〇円の間に該当する人からは、これだけ税金をひいてください」というのを一覧表にしているものがあります。
この表は、「大体このくらいの給与の人なら、このくらいの税金をもらっていれば、年収に対する税金が回収できるだろう」という金額を、おおざっぱに予想したものなのです。
この予想金額で、サラリーマンは、所得税を前払いしているのです。
ところが、所得税の計算ってちょっと複雑なのです。
そのため、間違いなく源泉徴収した所得税と差額がでてしまいます。
この差額を調整し、支払いすぎた所得税をサラリーマンに還すのが、年末調整なのです。もしも徴収不足の時は、追加で徴収されます。
これで、年末調整の仕組みは、イメージできたと思います。
いったい還付金はいくら戻ってくるの?!
1.還付金は計算できるの?
これまで、年末調整とは、前払いした所得税と確定した所得税との差額を、納税者、つまりサラリーマンに還付する制度だと説明してきました。
では、その差額はどうやって計算されるのでしょうか。
残念ながら、こればかりは、このケースならこの金額、というものがありません。
その理由は、所得税の計算がちょっと複雑だからです。
2.所得税の計算はどうやるの?
ここからは、所得税の計算が複雑だ、という説明です。
興味のない方は読み飛ばして構いません。
所得税は、個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間に得た収入の合計金額に対してかかる税金のことです。
ただし、収入に対し、一律に税金をかけるわけではありません。
そこには、個人の事情が加味されます。
加味される事情で主なものは、
・扶養している親族が何人いるか、またその年齢は何歳か
・保険料や年金の支払いがいくらあったか
(社会保険、個人加入の生命保険、地震保険、確定拠出年金等)
・シングルマザーでないか
・納税者や扶養親族が障碍者でないかです。
そのため、これらを証明する書類(たとえば、生命保険料や地震保険料の控除通知書)の提出を、年末調整の担当者からしつこく提出を求められるのです。
もし、これらの事情に該当すれば、それぞれに応じた金額を、収入金額から差し引いてくれます。それにより、税金の対象となる収入金額が小さくなるため、結果、税金が安くなります。
これを「所得控除」といいます。
これとよく似た制度で「税額控除」というものがあります。
税額控除の代表的なものは、住宅ローン控除(年末調整で使えるのは、2年目以降から)で、これは、所得控除で安くなった後の税額から、さらにこのローン残高の1%をそのまま引くことができる制度です。
所得控除と似ていますが、差し引くタイミングが異なるというわけです。
3.還付金、何か目安はないの?
もし、その年の給与明細と賞与の明細が全てお手元にあるのなら、それを使って還付金を簡易的に計算するツールが、いくつかネット上で公開されているので、それを参考にしてください。
それから、私が考える本当におおざっぱな目安を参考までにお伝えします。
まず、還付金は源泉徴収額を超えることは絶対にありません。
そのため、毎月の給与明細と、ボーナスの明細から源泉徴収された金額をまず確かめましょう。
そして、所得控除がある場合は、その所得控除の金額に、自分の「所得金額」に対応する税率をかけましょう。
その金額が、個人の事情で安くなった税額なので、この金額に近い金額が戻ってくることが見込めます。
ただし、ここでは「所得控除」の計算方法と「所得金額」の説明は省略します。
また税額控除がある場合は、この金額に近い金額が戻ってくる可能性が高いです。
住宅ローン控除の最初の方は、ローン残高の1%(上限あり)が目安となります。
まとめ
年末調整の仕組みは、源泉徴収の仕組みがイメージできれば、そんなに難しくありません。
これを知れば、これまでよく見なかった給与明細を見るのが、少し楽しくなるのではないでしょうか。
今年の還付金は一体いくらでしょう。
必要な書類は早めに提出し、ムダな税金を払うことのないようにしましょうね。